ある人の紹介を受けて、PCや周辺機器の設定に行く事になった。
相手はもう70歳になろうかという、いわば団塊の世代の方。
団塊ジュニアと呼ばれる僕からすれば父親の様な年代の方だ。

「ひかり回線に契約するとパソコンがもらえる」という事で
わけがわからずにそのまま契約したのが2年前。
それをそのまま放ったらかしにしてたのを、一発奮起してパソコンを始めようと
地元の商工会議所が主催するパソコン教室に通い出したそうだ。

今までパソコンなんて触ったこともなく、キーボードの打ち方もわからない。
11単元で構成されるPC教室の4単元目は「スタートメニュー」の使い方で
キーボード操作はまだ登場していない、という講習内容。

今日、初めてその方のお宅に伺いその方とも初の対面をした。
「必要かな、と思ってプリンターも買ったんですよ」と嬉しそうに語ってらした。

モデムの有無を確認してネット接続、それからセキュリティソフトの設定やOSのアップデート、
プリンターの接続など作業を進めながら、色んなお話をさせて頂く。

息子さんは僕とほぼ同年代で3歳の孫が一人いる、という事で
「本当に自分の親父と同じ世代なんだな」と改めて実感。

「今から教室に通って大丈夫でしょうか。出来るようになりますかね。」という
新しくプリンターを買った高揚感とはうらはらな不安を口にされたので
「大丈夫ですよ。基本的にこれ(パソコン)は楽しいものですから。
教室だけでなくどれだけお家で触るかですから。女性と同じで(笑)」という軽口で返す僕。

そんなやりとりをしながら僕はある漫画の事を思いだしていた。
最近、読み始めた漫画で「黄昏流星群」という作品がある。

「島耕作シリーズ」でお馴染みの弘兼憲史氏の作品で、
「シニアが読める漫画」をテーマに主人公はおよそ50代以上の設定がされており
熟年の恋愛の話が多いのだけれども、パソコン設定している自分がいる風景に
その漫画の中に出てくる風景と同じ物を感じたのだ。

若い時ならこういう漫画は「辛気くせえ」と思って避けていたんだろうけど
自分も40を過ぎて「ああ、もう人生折り返し過ぎたんだな」という実感と共に
この漫画も非常に面白く読めるようになったんですよね。

別にこの漫画のお話みたいな老いらくの恋がしたいというわけではないけども、
主人公達のバックボーンのリアリティを数年後の自分に重ね合わせる事が
出来るようになった、という事なのかも知れません。

団塊の世代と呼ばれ高度経済成長期を駆け抜けた方と、そして団塊ジュニアと呼ばれる僕が
パソコンという所詮ただの機械を通じて知り合えて会話してる不思議。
もしかして、今なら親父ともこうして話が出来たのかも知れないな、と
帰り道のバスの中でぼんやりと考えていました。

この方が「続けよう」という意志を持ちつづける限り、
僕がさりげなくサポートしていければいいな。