毎年、夏が近づいてきてセミが鳴き出す頃には、太平洋戦争関連の物を読んだり観たりしたくなる。
小学校の時に読んだ「戦艦武蔵の最期」以来、ずっと変わらない習慣。
自分が体験したわけでもないのに、セミの鳴き声と炎天下で浮かぶ風景はラジオから流れる玉音放送をうなだれながら聞く人々の姿。
未だに毎年、いろんな書物が出てくるのでこの年齢になるまでに様々な事を知りました。
現在から見ると負け方を知らなかった、としか思えない日本が歩んだあの頃の様々なエピソードからは学ぶべき事が多いです。

さて、先日U-NEXTにお試し加入して、結局そのまま課金を続ける事にしたという話を書いたかと。
他のサブスクでは見れない様な映画がたくさんあるので、観たかった古い映画を合間で楽しんでます。

「あなたへのオススメ」みたいなので表示されたのが1965年の邦画「太平洋奇跡の作戦 キスカ」。

太平洋奇跡の作戦 キスカ [東宝DVD名作セレクション]

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三船敏郎, 山村聡, 佐藤允, 中丸忠雄, 志村喬, 平田昭彦
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当時の日本軍が行った作戦の中で珍しく大成功した「キスカ島撤退作戦(1943年5月~7月)」を描いた映画です。
自分が産まれる前の映画なので、出演している俳優さんは「観たことあるな」ぐらいの人ばかりですが、当時の東宝のオールスターキャストだそうで。
とはいえ、三船敏郎さんは知ってましたが、映画を観ていて
「あ、黄門様や(西村晃さん)」
「あ、ウルトラマン(黒部進さん)」
「あ、イデ隊員(二瓶正也さん)」
「あ、ソガ隊員も(阿知波信介さん)」
「アタック25!(児玉清さん)」などなど、1971年生まれの自分にも馴染みのある人が多いんやなあ・・と。

女性が一切出てこないというのも珍しいな、と思いながら観てたんですが、キスカ島撤退作戦の各エピソードを丁寧に盛り込んだ圧巻の脚本でした。
戦後、語られる当時の作戦の無謀さとして「突撃」「精神論」などがよく出てきますが、この作戦を指揮した木村昌福少将は一度出撃したもののキスカ島周辺の霧が晴れてしまったために帰投してはるんですよね。
部下は「ここまで来たのだから突入しましょう!」と迫るんですが「帰ろう。帰ったらまた来れるじゃないか」と諭したそうで。

もちろん軍令部や司令部からもボロクソ言われるわけですが、当の本人は軍艦の上から釣りをしてたそうで(笑)
映画では大村少将と名前が変わってますが、三船敏郎さんが素晴らしい演技を魅せてくれます。

結果、霧も味方につけながら、15隻ものアメリカ軍艦が包囲しているキスカ島の守備隊全員(約5200名)を1時間で回収して離脱、という離れ業を達成。
空になったキスカ島(犬だけは残されたそうです)にアメリカ軍は34000人で上陸した際、同士討ちで100名が死亡したとか。

この辺りのエピソードもうまく盛り込まれており、円谷英二率いる特撮班もあえてのモノクロを逆利用したのか軍艦の特撮も全然ショボくは感じませんでした。
それがメインではなく、ドラマ部分がきっちり成立してたからこそなんやろねえ。
この映画が作られたのは終戦から20年後。
実際にキスカ島から生還した近藤敏直さんが全面協力した、のもこの臨場感を生んでるんでしょうね。

キスカ島撤退作戦の事は確か13年ぐらい前に読んだこの本で詳しく知りました。

木村少将のエピソードがとても読みやすく書かれています。
当時の日本軍のエピソードからはやっぱり段取りと冷静さってとても大事なんだなという教訓が得れますね。
いつも足を引っ張るのは何も考えず何も手を動かさない人達、というのはいつの時代も一緒なのかもしれません。

最近読んだ本:ペリリュー

ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 1 (ヤングアニマルコミックス)

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武田一義, 平塚柾緒(太平洋戦争研究会)
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海外ドラマ「パシフィック」でも描かれてたペリリュー島の戦い、そして終戦から1年10ヶ月も経ってアメリカ軍に降伏した日本軍のお話。
可愛い絵柄の漫画、という形式ですが内容はものすごく強烈。
これで劇画調だと恐ろしくてまともに読めないと思うので、それでバランスが取れてるのかも知れません。

まだ全巻読めてませんが、この夏が終わるまでには。