先週の検査から引き続き、いよいよ手術当日がやってまいりました。
僕自身いい大人ですが、お医者さんが好き!なんて
行き遅れのバブル残党バ●アが口にしそうな価値観などあるわけがない。
特に耳鼻科に関しては幼い頃から痛い思いしかしてない気がするので
実際は心臓バクバクさせながら、ニッコリ笑顔マルマルモリモリ状態で
意気揚々と向かったのでした。

1.とりあえず麻酔をかけましょう。

診察台に座り、まずは麻酔をかけます。
とはいっても注射ではなく、麻酔薬を浸したガーゼを鼻の中のポリープを包むように
ガスガスと詰め込んでいく作業。

これがもうね。涙ポロポロ出てくるんですよ。
ハナクソほじるために一番細い小指で到達できる深さなんてものじゃない。
そんな奥にまで行けるのかよ?みたいなレベルの深さにまで到達するガーゼ達。
気がつけば左右の鼻に10本ずつ、計20本のガーゼが入りました。

「このままおまちくださいねー」って事で待合室にて放置。
不安感を振り払うかの様にTwitterしまくってました・・・・

2.そして、本番へ・・・・・

40分ぐらいした後に再度診察室に呼ばれる。
「さて、じゃあやりましょうか」淡々とした先生の言葉とは裏腹に
「よ、よ、よろしくお願いしもうす」となぜか薩摩っぽくなる僕。

まずは両方に放り込んであるガーゼを抜く作業から。
次々と出てくるガーゼを見ながら、ドリフで志村が口から国旗出してたなあ、
みたいな事をぼんやりと考えてました。
麻酔がきいているせいかそんなに痛くなかったです。

比較的、程度の軽い右の鼻孔から開始。
ペンチみたいなので鼻の穴をグイっと広げて、鼻鉗子(はなかんし)という器具で
ポリープを摘出するようです。
・・・・・けっこうアナログなんですなあw
手術始まる前はそれこそレーザーかなんかでウィーンて焼いちゃって
ポリープがドロドロ溶けて終了なのかと思ってましたが
この部分は、未だアナログでもしかしたら先生の腕の見せ所なのかも知れません。

麻酔が効いている事もあり痛みはないんですが・・・・・
なんて言うんですかね。
耳から聞こえる音じゃなくて、頭蓋骨に直接響く「メリメリメリッ」という
張りついてる根っ子を無理矢理引きはがすような音がするんです。
普段の生活ではまず聴けないサウンドが頭の中を駆け巡ってます。
・・・・・ぐいっと引っ張られる感覚と共に。

右側はでっかいのが二つあったみたいでそれ以外は特になく
出血もほとんどなかった様子でした。
ひそかに鼻をスンスンしてみても、あまり前と変わらない感覚。

さてお次は「全く空気が通っていない左側」へと舞台は移ります。

3.「先生、それ、無理です・・・・!」

左側の状態はどんな感じかというと
小指を第1関節まで入れるだけでポリープに触れる、というレベルです。
自分でこの状態を認識してから10年は経っていると思われます。

まずは表面を塞いでるやつを切除。
そしてメリメリが幾度か続いたあと、一旦小休止が入りました。
ここで吸引(鼻汁・血など)、そして内視鏡を使って奥の確認をする先生。

「あらー、奥の方までびっしりだわ。」

なんですと!

この時点でスンスンしてみたらけっこう空気が通ってたのですが
さすがに10年以上は閉ざされた空間、鼻茸は思った以上に育っていた様です。
ナウシカで言えば腐海みたいなもんでしょうかw

先生はこの時点で内視鏡を片手に、そして片手に鼻鉗子という二刀流に。
「それじゃいきますね」
奥に入ってくる鼻鉗子。
ぐいっ、メリ・・・・・メリ・・・

あれ・・・・痛いぞ・・・・?

「あー、もうね。ここまで奥になると麻酔もあんまり効かないからねー(苦笑)」

え、何?いやいやいやいや!なんで苦笑なのよ!

今、先生が掴んでるポリープは確かに普段から存在を感じてたヤツ。
(なんと言っても鼻の奥から喉の方まで垂れ下がってるヤツもいるのだ!)
グイッと何度も引っ張るも「メリ・・・」って感覚と痛みがするだけで
全然、取れてくれないのです。

「あー、根っ子、固いねー」

ええ、そうでしょうそうでしょう。だって痛いっす先生。

「せーの!」メリッ・・・!

かけ声と共に瞬間的に今までにない力を酷使する先生。
「のわっdfxp@dfgb@fd」みたいな声を発する僕。
「ほーら!」目の前で見せられる大きなポリープ。
「あ、す、デカイっすね・・・・」
もちろん溢れる涙でそいつははっきりと見えないのである。

鼻息で曇りまくる内視鏡を助手さんに何度も温めてもらう先生。
センセ「あっため過ぎたらだめだよー。レンズ割れちゃうんだからーw」
助手さん「あーそうなんですかぁ」
僕「・・・・・・・」

「さてと、仕上げますかね」
良い意味で先生はとてもCOOLだ。
たぶん、僕は先生の作品の一つなんだろう。

内視鏡を使って、奥の奥まで切り込んでくる鼻鉗子。
そして多分、目の横に近いであろう場所のポリーブにたどり着いた。
「せーの」
rpgspごspろあだs!!!!!!!!!!
と同時に一気に鼻が通る感覚!
最後の大物が捕獲された瞬間であった。

「あ、でもね。こいつの根っ子がまだあって・・・・」
「ふぇ(涙声)」
「こ・い・つ・を・・・・・っと(原文ママ)」

あが・・・・あああああああ!!

「先生・・・・・それ・・・・無理です・・・・・」
「あ、そう?んじゃ表面だけ削っとくねー」
「ふぁい(超涙声)」

永遠の時間に感じられる手術は終わった。
ひそかにスンスンしてみると、今まで忘れていた感覚が・・・!
これが・・・・・これが正常というやつなのか!

僕「センセ、すんげー通ってんのがわかりますよ!」
先生「あ、そう。そう言ってもらえるとうれしいねー」
助手「でもすぐガーゼ詰めちゃうからまた詰まっちゃうよねー」

・・・・てめえ、オラァ!!

もちろん出血もひどかった様で両鼻に再度ガーゼを詰められたのであった。
ここまで若干1時間。
途中で病院が入ってるビルの防災訓練が始まり、
「火事です!逃げて下さい!」というアナウンスに
「うるせーボケ!今すぐ逃げたいわ!」と心の中で叫びまくってた手術だったのでした。

「じゃあ、明日。ガーゼ抜きますので」
「ふぁい(鼻声)」

この日はこれで帰宅した。

4.手術前よりも苦痛な夜。

両鼻にガーゼが詰められた夜。
前を向くとガーゼからあふれ出た鼻汁や血がしたたりおちる。
なにかを食べたり飲んだりすると、鼻に抜ける空気が行き場をなくし
あちこち巡った後、目から涙と共にこぼれ出るという感覚。

嫁さんがカレーを作っていてくれたので、流し込むようにして食べて
薬を飲んで布団に入った。
もちろん口を開けたまま寝ていたようで、「ガラガラガラー」という
うがいの様なサウンドをたてて眠っていたらしい。

朝8時ごろまで寝て起きて、鼻の中の液体を出しを繰り返し
その日の診察開始をひたすら待ち続けた。

5.自由への解放

「とにかくこのガーゼを抜いて欲しい」
その思いだけが僕を支配していた。
朝一の診察を目指して車を走らせる。

午前10時過ぎ。
「じゃ抜きますね」相変わらず先生はCOOLだ。

麻酔はすでに切れている。
ガーゼは奥に入っている。
そのガーゼは血や鼻汁を吸い込んでいる。

どんな事が起こるかおわかりか?

右の5本を終えるまでに僕の涙は涸れ果てる寸前だった。
「出来るだけ普通の顔してくださいねー。そうしないと痛いですよー」
普通ってなんだ?なんなんだよ普通って・・・・・!
左の5本を抜き終わった時、この2日間の苦労が報われた気がした。

鼻孔を駆け巡るその空気の量の多さよ!
これが・・・・これが自由なのかい?
空気って吸うと痛いんだな。そんな事すら忘れかけてたんだぜ・・・・

「はい。お疲れ様でした。」
「ありがとうございましたぁ!」

25年もの間、鼻孔を塞いでいたポリープは消え失せた。
僕自身、左の鼻で息を吸うって事すら忘れていたのだから。

しかし蓄膿症を患ってる方ならおわかりであろう。
これは根本的解決にはならないのである。
何年後かはわからないが、この鼻茸は再度育ち、そしてまたいつか鼻孔を塞ぐ。
僕ですら3回目の摘出手術なのだから。

数十年ぶりのこの自由を楽しんで生きる事をかみしめながら
今回の手術記を終えようと思う。

先生、本当にありがとうございました。
若干の脚色もない事はないので、あえてどこの病院なのかは伏せておきます(笑)

今回の費用:手術日 \12,750円 + ガーゼ抜く日 \550でした。