オリンピック中継、そしてSMAP解散という話題の中で迎えた71回目の終戦記念日。
その中で「終戦記念日なのになぜその手の番組がない」と騒いでいる人達もいて
「これだからマスコミは」「アベの陰謀だ」などという話になってたりしますが
そもそも民放で作ってる終戦関連の番組、ドラマなどは
数年前からとっくに内容、クオリティ共になくてもいいレベルにまで落ちています。

制作費、広告費が削減される中でスポンサーの意向を汲まなければならぬ
そのシステムの中、まずキャスティングありきのドラマや番組で何が作れましょうか。
僕たちの手にはリモコンというスイッチがあります。
そう。気に入らなければ見なきゃいいだけの話なんですよね。
そういう事情を察して「そりゃそうだよな。どこも大変だ。」でいいんじゃないですかね。

それこそ一番ひどいな、と思うのは今までこういった番組を一度も見ていなくて
テレビ欄だけざっと眺めてこういう事を言っている人達ですね。
「終戦記念番組」という文字がテレビ欄に踊っていればそれで満足というのなら
大したもんだな、と思うわけですよ。

そんな中、昨年の70周年記念でテクノロジーを駆使して
さまざまな場面の再現を試みたNHKスペシャルは、今年少し変わった視点での
番組をこの8月15日に持ってきました。

http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20160815

ふたりの贖罪(しょくざい) ~日本とアメリカ・憎しみを越えて~

以下、公式サイトからの引用。

憎悪が、世界を覆い尽くしている。どうすれば、憎しみの連鎖を断ち切ることができるのか。その手がかりを与えてくれる2人の人物がいる。70年前、殺戮の最前線にいた日米2人の兵士である。
「トラトラトラ」を打電した真珠湾攻撃隊の総指揮官、淵田美津雄。その後もラバウル、ミッドウェーを戦い、戦場の修羅場をくぐってきた淵田だが、1951年、キリスト教の洗礼を受け、アメリカに渡り、伝道者となった。
淵田が回心したのは、ある人物との出会いがきっかけだった。元米陸軍の爆撃手、ジェイコブ・ディシェイザー、真珠湾への復讐心に燃え、日本本土への初空襲を志願、名古屋に300発近くの焼夷弾を投下した。そのディシェイザーもまた戦後キリスト教の宣教師となり、日本に戻り、自分が爆撃した名古屋を拠点に全国で伝道活動を行った。
戦争から4年後の冬、ふたりは運命の出会いを果たす。ディシェイザーの書いた布教活動の小冊子「私は日本の捕虜だった」を淵田が渋谷駅で偶然受け取ったのだ。以来ふたりは、人生をかけて贖罪と自省の旅を続ける。淵田はアメリカで、ディシェイザーは日本で。
ふたりの物語は、「憎しみと報復の連鎖」に覆われた今の世界に、確かなメッセージとなるはずである。

映画「トラ・トラ・トラ」は何度も見ていますが、まさかあの淵田美津雄氏が
戦後、伝道者となってアメリカを講演してまわってたのは知りませんでした。
そして、そのきっかけとなったのも、ドゥリットル爆撃隊の爆撃手であった
ジェイコブ・ディシェイザー氏との出会いだったとは。

戦後、敵国同士だった互いの国に行って、
当事者が講演して回るなど想像しただけでもキツい。
だけどそこには様々な葛藤があったのをとても分かりやすくこの番組は伝えていました。

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伝道師になりたての頃のジェイコブ氏の肉声テープは、彼の葛藤を凄まじく伝え

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真珠湾攻撃の際の淵田氏の憎悪にあふれるこの発言もとても生々しかったです。

伝道活動を続ける中、淵田氏がよく言っていたというこの言葉が刺さりました。

「無知は無理解を生み、無理解は憎悪を生みます。そして憎悪こそが戦争を生むのです。」

まさにこの言葉は「記念日に番組がないとはどういう事だ」という騒動に対しても
充分に当てはまる言葉に違いありません。

もし、ここ数年の民放がやっていた記念番組を真面目に見た事があるのならば
番組欄に「記念番組」がないという事に憎悪など生まれません。
そして、その憎悪がなければあらぬ方向に話の筋が行ったりもしないんですよ。

僕自身は「人は『忘れる事が出来る生き物』である」と思っていますから
戦争があったという事実はともかく、○○人のせいだとか
あの時にこんな事をしやがって、とかそういう物はもう忘れていいのではと思うのです。
でないといつまでも次の段階に進めないじゃないですか。

憎むべき物は「戦争」という愚かな行為そのものであって
それを起こした過去の状況や過去の人ではないはずです。
いつまでもアメリカがどうだ、韓国人がどうだとか国や人名が口に出ている以上、
その人は「無知」であり、それが「無理解」を生んでいる気がします。
「あいつはオレとは違う。なんか気に入らねえ」でケンカが始まるのと同じです。
一番いいのはそれを認めるかスルーして「お互いがんばろうね」でいいと思うんですがね。

今回のNHKスペシャルは、元々僕が思っていたこういう事を
きれいになぞってくれる内容で見ていてとても感銘を受けました。

「次の段階に行くための何か」とは「憎しみの連鎖を断ち切ること」。
こういうテーマで終戦記念日の番組を制作してくるNHKは大したもんだと思いました。

NHKオンデマンドでも配信されるので必見です。