街を行くと子供達が携帯ゲーム機を持ち寄って
マンションの踊り場にたまっている風景を見かける事がある。

これはもちろんアドホックモードで協力プレイをするためでもあるのだけど
パスワードのかかっていない一般家庭の無線LANスポットに接続する、という
なんともまあ、な理由もあるそうだ。

そして、記憶は遙か遠い1983年に・・・・・

あの頃の僕等の手にはステンレス定規があった。

自転車で少し遠い所にある駄菓子屋までみんなで走った。
そこにはゲームセンターの半額である50円でプレイできるコイツがあったのだ。

ハイパー・オリンピック(コナミ)
翌年にロサンゼルス・オリンピックを控えたこの年にコナミが出したゲームである。

操作系は左右の「RUN」ボタンと真ん中の「ACTION」ボタン。
このRUNボタンを早く叩けば叩くほど、キャラクターは早く走ってくれる。

こいつをプレイし始めた当初は、左右のボタンを両手で交互にカチカチ叩いていた。
しかし、それはどうも効率が悪いぞ?と思って僕たちは次に100円玉で
片方のボタンをこするように動かした。
もちろん、コントロールパネルは傷だらけだ。
誰かが駄菓子屋で売っていた少し大きめのビー玉を使い出してからは
それがみんなにも伝わって、それがメジャーな方法になった。

僕等は走った。現実の地面ではなく仮想空間の中を。

駄菓子屋のおばちゃんはどう見ても機械を破壊しようとしてるとしか思えない
僕等の所行にも、にこにこ笑って見逃してくれた。

ある日の教室、誰かが定規を机の縁にあてて、ブルンブルン震わせて遊んでいた。
それを見た別の誰かが
「あああああ!おい!もしここにボタンがあったら、めっちゃ早く押せるんちゃう?」
「え、なんて?あ・・・・・・ほんまや!!!!」
左手で定規の端を押さえて、右手で上にはじいてブルンブルン震わせると
反動で定規は振動する。そこに「RUN」ボタンをあてようという魂胆だ。

その日の放課後、僕等はまず文房具屋に走った。
普段使っているのはプラスチックやアクリルの定規だけど
反動の大きさを考えるとやはりステンレス製のやつが一番だった。
しかし、僕等の行きつけの文房具屋にはどこにも置いてなかったのだ。

すこし遠い商店街まで自転車を飛ばして出かける。
そして製図用品店でようやく見つけた15センチのステンレス定規。
安っぽいけどちゃんとケースに入っていて、ズボンの尻ポケットにちょうど入る。
なんか特殊警棒チックで少しだけカッコイイんじゃないか?とか思った。

そこから僕等はいつもの駄菓子屋まで自転車を飛ばした。
その日、僕たちはワールドレコードを叩き出しまくったのだった。

ロサンゼルスオリンピックの前年である1983年。
僕たちはカール・ルイスよりも早く走れていたのだ。
ブルンブルンとやかましいステンレス定規の振動と共に・・・・・

・・・・・ってな事をこの動画を見て思い出しましたよ。

ハイパー・オリンピックはその後、MSXやファミリー・コンピュータにも移植されたので
自宅で定規をブルンブルンさせた人も多いのではないでしょうか。

僕はこの次に出た続編である「ハイパー・オリンピック’84」の方が好きで
よくゲームセンターでやっておりました。

http://www.youtube.com/watch?v=9BDWBu1Ah2U

こっちはクレー射撃やアーチェリーなどもあって、
特にステンレスを使わなくてもプレイできたのでよく遊んでたものです。
(さすがに定規を持ち歩くのは・・・とみんな気づいたため)

そしてそのステンレス定規、なんと今でもペン立ての中に入ってます(笑)
さすがはステンレス素材、錆びないし歪まない。
あの頃みたいにブルンブルンやるよりは、手っ取り早く連射機能オンにするような
創造力よりも効率を重視、というイヤな大人になっちまいました、はい。
ステンレス定規は今ではカッターで切る時にあてたりとか、線を引くなどなど
本来の使い方をされてがんばっております(笑)

それにしても、あの頃ってなんであんなに必死だったのかな。
今、DSとかPSP持って集まって黙々とゲームやってる子供達と
おそらく何も違わないんだろうな、と思います。
対象物が変わっただけでね。