自分の趣味の一つでもある「Wikipediaサーフィン」をしていた時だと思うのだけど
「八甲田雪中行軍遭難事件」のWikipediaにふとたどり着いてしまった。
これは明治35年に起きた旧日本軍の雪中行軍中に起こった事件で
210名中、生き残ったのがなんとたった11名というすさまじい事件。
この事件の事はまったく知らなかったので、息をのみながら読み進めてたのですが
いまいち文章だけでは掴みにくい。
「そういえば『八甲田山』って映画があったような・・・」と思って
関連リンクを見ると1977年に新田次郎氏の小説を元に映画化されておりました。
なのでまずこれを見てみようと思い、DVDを借りてきたという次第。
主演は高倉健、北大路欣也という何とも男臭い配役。
まずは軍の会議から始まる冒頭シーンですが、すでにここからイヤな予感しかしない。
雪中行軍はほぼ上層部の思いつきとも言える感覚で企画されて
「どうだ。違うルートで出発させて途中八甲田山ですれ違うのは。」
「ほほう。それはいいですなあ。」と
実際に現場に赴く人間の意向はまるで無視。
で、組織の性質上もちろん命令されたからにはやらんと仕方ないですから
健さんと欣也は頑張って隊の編成やらルートやら一生懸命考えるわけです。
そして健さんがその計画を持って行くと
「なんだこの編成は。これだと小隊にも届かんではないか!」と文句を言う。
しかし健さんの気迫に押されてこちら側の上官は、全ての指揮権を健さんに委ねます。
雪中行軍部隊も38名という少人数での行動になり、
結果的に健さんの部隊は一人の犠牲者もなく、八甲田山を走破するのですが
「現場に全てを委ねて、指揮系統が一つだった」というのが幸いしたのですね。
全ての行程に民間人の案内人をきっちりと立てたのも
「怖さをわかっている人間に委ねる」という危機管理の王道ですし。
悲惨なのは欣也側の部隊。
まず、編成人数を勝手に上官が210名と決めてしまい、
これも「あっちが少人数に対しこっちが大人数で走破すればメンツが・・」という
とてもよくありがちな理由。
雪山の経験がないにも関わらず、一生懸命準備した現場指揮官の意向は無視。
それと一番最悪なのが、欣也より上官が「視察目的」で随行する事になった件。
このおっさんが勝手に現場で案内人を「小銭欲しさのやつら」と追い返し
いきなり部隊に対してわけのわからん命令を出し始めるという、
もう本当に今の時代でもありがちな光景が目白押しで、見てて胸が痛くなります。
この映画は雪山の怖さもさておき、一番見所なのは二つの組織の対比でしょう。
今のビジネスシーンにも充分に使えそうな教訓があちこちにつまってました。
あと、随所に挿入される春・夏の八甲田山の光景がとても綺麗でした。
今までは場所も知らなかった八甲田山ですが、行ってみたい場所が増えました。
それにしても、久しぶりにがっつりと映画を見た気がします(笑)
もっと時間の使い方をうまくなりたいものです。