ここ最近、 内外問わずいわゆるレジェンド達が虹の橋を渡ることが増えました。
それだけ時が流れているという事なんでしょうね。
そら自分も50歳になるわけですし。

フィル・スペクターについてはこのブログでも何度も名前が出てきてるので、やっぱり触れておくのが自分へのケジメみたいなもの。
とはいえ、自分はオリジナル曲を書いて活動しているわけではないので「音楽的に影響を受けた」みたいな事は言えませぬ。
なんといいますか、今まで好きになった音楽のあちこちに「フィル・スペクター」という名前が絡んで来る事が多かった気がするんですな。
小さい頃の写真達を見返しているとよくある「あ、ここにもこのおっさん写ってるわ。誰やっけ?」みたいな感覚。
そのおっさんがたまたまごっついビッグネームだった、というのがしっくり来るんです。

ここからちょいと時系列でそれを振り返ってみる事にしましょう。
もちろん、彼の黄金期と言われる60年代初頭には自分はまだ産まれていないのでリアルタイム世代ではありません。

意識してラジオを聴き始めたのはちょうど1980年頃。
ビートルズという名前を知らないまま、ジョン・レノンの射殺をラジオで聞いて知っておりました。
その頃の洋楽ヒットは1977年にエルヴィス・プレスリーが死んだ余波みたいなものが残ってまして、ヒット曲のアレンジも60年代風の物が多かった気がします。
いわゆるレトロ再評価みたいなものが世の中の流れだったんでしょう。

この流れで最初にそれっぽいヒット曲だったのはビリー・ジョエルの「さよならハリウッド」。
元々は1976年の「Turnstiles」に収録されていたのですが、1981年に「Songs in the Attic」というライブ盤が出て、そこからライブバージョンがシングルカットされてヒットしていたのでした。

同じく1981年には大滝詠一御大があの「A Long Vacation」をリリース。
家にアルバイトに来てた大学生のお兄さんが忘れていったカセットテープで初めて聴きましたが、これも聴きまくってたもんです。

あと思い出せるのはブルース・スプリングスティーンの「ハングリー・ハート(1980)」とか

REOスピードワゴンの「涙のレター(1981)」なんかもレトロアレンジなヒット曲でしたね。

この辺りの曲が好きになったので、よう考えたらルーツミュージックを好きになる素養は出来上がりつつあったんでしょう。
あ、そうそう。アラン・パーソンズ・プロジェクトの「Don’t Answer me(1984)」も大好きでした。
これはビデオクリップがとってもオシャレなのでyoutubeにしときましょ。

これまで紹介した曲はどれもこれも「ウォール・オブ・サウンド」の香りがプンプンしていますが、この後1986年辺りから自分は洋楽最新ヒットについていけなくなっていきました。
この時はビートルズを聴くのに一生懸命だったからです。
全曲をなんとか集めきった後は海賊盤にまで手を出し始めるぐらいにまでハマリこんでたので、ここでようやく「フィル・スペクター」の名前を知ることになります。
ビートルズのラスト・アルバム「レット・イット・ビー」のプロデューサーとして起用されてたからです。

このアルバムではポールが「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」に過剰なアレンジをされて激怒した、というエピソードもあって「ややこしそうな人やなあ」という印象でした。

もちろんビートルズを知った後は各メンバーのソロ作品も聴く事になるわけですから、ジョンの「イマジン」「ロックンロール」、ジョージの「オール・シングス・マスト・パス」でフィルの仕事っぷりを堪能。

そこから約6年後、オールディーズ系のライブハウスでギターを弾く事になってロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」を知る事に。
最初に聴いた時は「あ、ビリー・ジョエルはこれをパクったんか」というのが正直な感想でした(笑)
あとはもうレパートリーにしなければならない曲にはフィル・スペクターの名前が出てきまくりますので、そこから一気に線が繋がった記憶があります。
思い出の端々に顔を出してるよう見るおっさんは実はスゴい人やったんか、というのが本当にしっくり来るんですね(笑)
そして、いかに後世に影響を与えてたのかという事も同時に知る事になりました。

満足にエコーもかけることすら難しかったあの時代に、あの音の壁を作り上げた功績はすごいと思います。
いまだに「ビー・マイ・ベイビー」のイントロのドラムがラジオで流れる度に心ときめくのは、いかにあのサウンドが素晴らしいかって事ですしね。

ご存じの通り、80年代以降は奇行が目立った上に一線を退き、2003年に起こした殺人で刑務所に収監されたまま帰らぬ人となってしまいました。
人生には浮き沈みがあるってのはこの年になってホンマよくわかりますけども、功績はずっと消えないんじゃないかなあ。

この死をきっかけにまた色んな未発表曲が出てくるかもしれませんし、HBOの2013年のドラマ「フィル・スペクター」の日本公開もあるかもしれません。

音楽ファンとしてはそれを楽しみにしておこうかと思います。81年間お疲れ様でした。安らかに。