なぜかこの番組だけ録画しそこねていて再放送をようやく見れました。
きっと放送時間がずれてたせいだとは思うんですが不思議だ。

この時期のNHKスペシャルはやはり戦時中の出来事の特集が多くて、
毎年これらを見るのにそれなりに時間がかかってしまいます。

今回はあの太平洋戦争の中でも最も無謀な作戦だったと言われる「インパール作戦」の特集でした。
NHKは過去、1993年に「ドキュメント太平洋戦争 第4集 責任なき戦場 ~ビルマ・インパール~」を放送しており(番組はアーカイブとしてこちらで無料で見れます)それ以来の大規模な特集だと思います。

今年のNHKスペシャルはビッグデータを地図上に反映させる事を主軸に置いているようで、広島原爆の番組に続いて今回も約30000人と言われた半数の15000人分の死者の死亡箇所を地図に反映させていました。

これを見てもわかるように作戦中の死者よりも作戦中止以降、撤退中の死者が多い事がわかります。
そもそも補給・兵站という部分を軽視して3週間という無謀な作戦計画から始まったこの作戦ですが、今回の特集は当時この作戦に参加していた生存者の方のインタビューを数人登場させていたのが印象的でした。

中でも司令官だった牟田口廉也中将のお孫さんが出演していたのに驚きました。
戦後も生き残って戦争犯罪人としての追求もされず、晩年は自己弁護に徹したという人物の家に生まれた、というだけで相当色々な事があったと思いますが・・・

番組は中将付だった斉藤博圀さんの日誌に書かれたコメントを挟みながら続いていきますが、最後に斉藤博圀さんが現在も生存しており、本人のコメントを収録して終わります。

牟田口中将が語ったコメントとして以下が伝えられています。

インパール作戦失敗後の7月10日、司令官であった牟田口は、自らが建立させた遥拝所に幹部将校たちを集め、泣きながら次のように訓示した。「諸君、佐藤烈兵団長は、軍命に背きコヒマ方面の戦線を放棄した。食う物がないから戦争は出来んと言って勝手に退りよった。これが皇軍か。皇軍は食う物がなくても戦いをしなければならないのだ。兵器がない、やれ弾丸がない、食う物がないなどは戦いを放棄する理由にならぬ。弾丸がなかったら銃剣があるじゃないか。銃剣がなくなれば、腕でいくんじゃ。腕もなくなったら足で蹴れ。足もやられたら口で噛みついて行け。日本男子には大和魂があるということを忘れちゃいかん。日本は神州である。神々が守って下さる…」。訓示は1時間以上も続いたため、栄養失調で立っていることが出来ない幹部将校たちは次々と倒れた

「気合いでなんとかなる」とか「ハングリー精神」という言葉は今でもよく聞きます。
自分はこういう無駄な精神論がとても嫌いなのは、こういう戦史ものをずっと読んできたからかもしれません。
現状を分析して出来ない事は出来ないと判断する事が悪という世の中にはなってほしくないですが、こういう精神論って未だにあちこちに根付いたままだなあ、と思うんですわね。
インパール作戦そのままの様子で経営している企業とかそれこそ無数にあるんじゃないでしょうか。

歴史から何を学ぶのか、というのは人それぞれですが失敗を失敗と認める潔さ、
そしてそれに関わってしまった時にいかに聡明な判断を下せるかという事に尽きますね。

旧日本軍の作戦から失敗のなんたるか、を知るには「失敗の本質」という本が面白いです。