ハナモゲラボ / 試行錯誤の実験人生

日々、PCや各種デバイス、楽器等に翻弄されながら電脳の森をさまよう男の日常と様々な実験をさらりと記しております。

大人がバンドを続けるという事~古市コータロー氏の自伝を読んで

June 11 2015

今でも一緒にバンドをやっている同級生から誕生日祝いに一冊の本をもらった。

2015-06-12 22.05.05

今でも活動を続けるザ・コレクターズのギタリストである古市コータロー氏の自伝
「お前のブルースを聴かせてくれ」という本。
コレクターズのライブに初めて行ったのもこの同級生と一緒だった。
まだお互いに高校生だったからそれこそもう26年も前になる。

この本、最初の方はどこそこで生まれて~というお話なので
その人自体に興味がなければ、それこそ読むのがしんどくなるのですが
コータロー氏独特の口調でそのまま書かれているのでけっこう読みやすかった。

こういう芸能関係の本は「デビューするまでのサクセスストーリー」で終わるものが
とっても多いのだけれど、自虐ネタとして自らも口にする「売れないバンド」としての
コレクターズのデビュー後以降のお話がとても興味深く読めた。

僕が初めて行ったチキンジョージでのライブ(3rdアルバムのツアー)時代、
各自の給料が5万円だった事も驚きだったのですが、リズム隊メンバーチェンジの経緯や
テイチクからコロムビアへの移籍の際の割り切り方などがすごく新鮮でした。

移籍に関しては僕と加藤くんでどうするって話はしたの。
テイチクに対して愛情もあったからね。
でも事務所の人間から「今給料が7万円だけどコロムビアになったらお前らに15万円以上
払える」って言われてさ。そしたら「じゃあ移籍しようか?」ってなるじゃない?

だって俺らプロだから

バンドを含めた芸能関連ってなぜか「お金の話は夢を壊す」と忌み嫌われる傾向が多いですが
この本はあえてその辺の事を赤裸々に語ってるのが彼ららしいなと思いました。
そしてこの割り切り方が20代前半で出来ていた事もすごいなと。

そういう意味では矢沢永吉氏の「成り上がり」と近い内容の本になってますが
物議を醸したあの本ですら金額までははっきりと書いてませんでしたし(笑)

そしてコレクターズの一番の苦境の「所属事務所が消滅」以降のお話が凄まじい。

「今月いっぱいしか給料出せない」という事務所に「再来月まで出してもらわないと困る」と
直談判するコータロー氏。
事務所消滅以降、まずファンクラブのスタッフとミーティングして
「月にいくらあったら運営できるのか」を話し合い、逆算してライブの本数を決め、
売上げの軸を作り出すためにマンスリーライブを企画して、自ら電話営業をかけ、
イベントのマネージャー会議にただ一人ギタリストとして参加するコータロー氏。

ややこしい事にならないために全てをキャッシュ精算にして
マンスリーライブ時に給料を手渡しする事にする辺りのお話は
「大人がバンドを続ける」という生々しい部分が垣間見えて、とても楽しく読めたのでした。

営業もしたね。知ってるヤツラに「イベントとかあったら声かけて」と言いまくって。
そうすると向こうはこっちの事情知ってるから
「AXでこういうイベントありますけど」
「ギャラは?」
「60」
「よし、請けた!」
ってそういう具合。

地方でのツアー時、ライブ終了後に電卓持ってライブハウスの事務所にいって
チャージバックの分配率を交渉する事まで書かれているのを見て
一部のファンの人達はちょっとショックだったかも知れませんね(笑)

でも、大人がバンドを仕事としてやっていくと言う事はこういう事ですしね。
今、CDが売れなくなったとか色々言われていますが、
僕としてはあの「お金の事を言うと夢が壊れる」という変に出来上がってしまった価値観が
限界に来ているせいだと思うのです。

AKBの総選挙を悪い事のように言う人達もいますけども僕はそうは思わない。
彼女達とファンの利害が完全に一致してああいう形でお金が動くのであれば
逆にものすごく健全な世界な気がしちゃうんですよねえ。

「バンド解散は結局金の事だった」をまるで汚い物のように言うのは
これまでのいわば「ファンへの教育」が間違ってたような気がします。

野球選手が毎年契約更改時にお金の事で揉めてますけども
あれが野球少年や野球ファンの夢を壊しているのか、と言うとそんな事ないですしね。

CDが売れない、というのならそれこそ大物アーティストバンバン引っ張り出してきて
「ちゃんと金出して買ってくれないと活動もままなりません。だからちゃんと買ってね」
みたいな公共CMでも打てばいいのに、と思うんですわね。

いつか来る未来。
小さなライブハウスでの光景。
「演者:今日シングル作って持ってきました。これが売れないと機材車の車検通せないんでw」
「客:わっはっは。そりゃそうよなw」
こんなMCが普通に出来る様になってこそ、ようやく本当の意味での健全な
アーティストとファンの関係が出来上がるような気がしています。

そして、自分の子供達にも
「本当に応援したい人達がいるのなら、ちゃんとお金を使ってあげるように。
なぜならそれこそがその人達がずっと活動出来るための一番の応援だから」
と教えて行きたいと思います。

この「お前のブルースを聴かせてくれ」は
コレクターズのファンだけでなく、全ての大人のバンドマンにもお奨めの本です。

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