毎年この時期になるとNHKスペシャルは太平洋戦争関連のドキュメントを放映するのだけども、
昨年から「新・ドキュメント 太平洋戦争」として5年がかりのプロジェクトになっている。

2017年頃からは取材したデータをデジタル解析、という手法を用いている。
インパール作戦の死者の死亡箇所を地図上に反映させたりして、本などでは理解しがたいことを目に見えるようにしていたのが印象的でした。

今も続く悪しき精神論 ― NHKスペシャル「戦慄の記録 インパール」を見て

この「新・ドキュメント 太平洋戦争」は日本中に散らばったままだった一般人・政治家含めた日記・手記などをまずデジタル変換。
そして、その中から単語毎にキーワードを抽出して時系列に沿って並べる事で当時の空気を読み取ろう、という眼目のようで。
現代で言うとTwitterの「トレンド」みたいなもので、自分がWeb関連の仕事をしているせいもあり、これは画期的だなと。

キーワード毎に抜き出せるデータを作っておくと、知りたいジャンル別で簡単に抜き出す事が出来る。
たとえば、東京在住、一般人、女性(20代~40代)の1941年12月の「戦争」という言葉が入った日記・手記だけ取り出す事なども簡単だ。

今まで見て来た番組や本というのは、あくまで戦争に参加した兵士の手記や研究者によって書かれた物が多くて、当時の庶民側の視点で書かれた物をあまり読んでなかったんですわね。
昨年読んだ「決戦下のユートピア」という本がとても面白くて、戦時中の生活者側からの視点も知りたいなと思ってたとこでした。

戦争が始まる1年前の1940年のキーワードには戦争というワードは少なく、東京に暮らす女性の日記には「アメリカ映画を見に行った。憧れの世界」のような言葉が溢れていたのに、たった1年で同じ人が「アメリカを叩きのめさなければなりません」と書いてしまう怖さ。
そして戦争をする事が善、みたいな本を出版する当時の文化人達。
今で言う「インフルエンサー」みたいな立場なんでしょうな。

当時の情報源は新聞・ラジオ(そして大本営発表)しかなかったせいもあるでしょうけども、真珠湾攻撃(1941年12月8日)が成功した時の世間の空気は9割以上が歓喜の声だった、というのも驚きでした。
マレー半島、フィリピンなど初戦は連戦連勝だった日本は、1942年に入るとミッドウェー海戦の大敗北をきっかけに、ガダルカナル島の無謀な消耗戦に突入していく。

「新・ドキュメント 太平洋戦争 1942」の前半だけ見終えて思ったのが、
やっぱり誰かや何かを盲信してデカい声をあげる、ってのは非常によろしくないな、という事ですね。

このドキュメントに登場する一般の人達がどう生き抜いて、何を考えたのか。
そしてそこから現代の自分達は何を学べるのかという視点でこの番組を見守りたいな、と思います。