待ち望んでいたビートルズ「ゲット・バック・セッション」のフィルムから再構成された映画「Get Back」。
劇場公開をやめてディスニープラスのみの配信に決定したのは6月ぐらいだったかな。
スター・ウォーズを見てしまえ、って事で加入したままのディズニープラスがこんな所で役立つとは。

ブートレッグなどで音声を聞いたり、ソフト化されずじまいの映画「レット・イット・ビー」をビートルズ・シネ・クラブ主催の鑑賞会(中之島公会堂だったかな)で見たりしてたものの、あん時はまだ子供だったからようわからんかったってのが事実。

ただ、95年の「アンソロジー」でリマスターされたルーフトップコンサートの映像がめちゃめちゃきれいだったので、いつかはリマスターされるんやろな、とは思ってはいたんです。
今回の「Get Back」の制作が決まった時にオリジナルの「レット・イット・ビー」もリマスターされる予定と書かれてましたが、これがあれば別にもういらんのちゃうかな。

映画「レット・イット・ビー」は時系列がバラバラで編集されていたんですが、今回はカレンダー通りに映像が進んでいくのでとてもわかりやすい。
ライブ活動をやめて、レコーディングアーティストになっていたビートルズが約2年半ぶりのライブを企画。
「原点に帰る(Get Back)」というコンセプトを掲げて「オーバーダビングをしない」アルバム制作、その制作過程をフィルムに収めて映画にする、という事、そしてコンサート日程だけが決まって突入したこのセッション。

日程ありきで内容も会場も決まってないまま、慣れない映画スタジオでスタッフ達に合わせて朝型の生活を強いられる。
ロクな録音機材はないし、周りに人はウロウロしてる中で新曲を作り上げていく、とかそりゃ無理ですわ。
環境が悪いと人間ですもの、そりゃ覇気もなくなっていきますわ。険悪にもなるし。
後にそれぞれが解散後にソロとして発表する曲もちょこっと歌ってたりするのは見てて心がざわつきますね。
ポールの「アナザー・デイ」とかこの時にすでにほぼ完成してたんやなあ、と。
1969年1月2日から始まって、たった8日でジョージ・ハリスンがバンドから離脱、という所で映画のPart1は終了する。

映画スタジオから自分達の会社「アップル」に作ったばかりのスタジオに移動してセッションは継続。
びっくりしたのはポールとジョンがランチ時に二人だけで話しあった内容が隠しマイクにて収録されていた事。
そこまでするかー、と驚きましたがそこでの二人の会話がバンドの事をすごく考えてたんやなあ、とちょい感動。

無事にジョージも復帰し、新しいスタジオの音も気に入ったみたいで4人の顔に笑顔が戻りはじめます。
たまたま挨拶に訪れてたビリー・プレストン(キーボード)とセッションをする事になるんですが、まあみんな楽しそうで(笑)
結局は「演奏してるのが好きな連中」なんやなあ、ってのが画面から溢れてました。
そりゃいい音になって、新しいプレーヤーがええフレーズを弾いたりしたらやる気も出ますわなw

でも、プロジェクトとしてはどっかでライブをやって締めなければならない。
その為の憂鬱な話し合いなどを重ねて行くうちに、またリハーサルの内容がすこしグダグダになっていくんですが「ここの屋上とかどう?」って思いつく場面がすごい劇的です。
「仕事」として見るとめっちゃめちゃグダグダで行き当たりばったりなんですけどね(笑)

屋上でのコンサートもやる気あったのはジョンとジョージで、ポールは前日まで悩んでたってのも意外。
てっきりポールだけがやる気で、あとはしゃーないから付き合ってるんやとばかり思てました。

屋上コンサートの前日のリハーサルも知ってる曲をテキトーに合わせて遊んでる感じでしたが、いざ本番になるとやっぱりプロやね。
あんなに気合入った演奏が出来るんやもの。
ずっとレコードやCDで聴いてきたテイクが出てくるとやっぱり鳥肌が立ちます。
その完成までの過程をずっと7時間見てきたわけですし(笑)

この屋上コンサートのテイクから「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」「ディグ・ア・ポニー(短く編集はされている)」「ワン・アフター・909」が収録され、翌日スタジオで行った「静かな曲用」のセッションからは「レット・イット・ビー」「トゥ・オブ・アス」「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」が収録される事になります。

ただ、このセッションで残されたテープは放置され、数週間後に「アビイ・ロード」のセッションが開始される事になり、4人がスタジオで顔を合わせるのは1969年8月20日が最後となるのでした。。

なんかもうね。同じ人間とはいえ、濃密過ぎる1年をよう20代の若者がここまでやりきったよなあとしか思えない。
1969年のレコーディング年表を「ビートルズ楽曲データベース」に作ってますが、ものすごい仕事量。

名曲達がどうやって組み上げられ、そして形に残されるのかという意味でも最高のドキュメンタリーでした。
なんやソフト化される際には合計12時間になる、という噂も流れてますけどもどうなんやろねえ・・・