所属しているバンドのライブがあったのだけど、
今回は僕からのリクエストという事でABBAの「ザ・ウィナー」を演奏する事になった。
1980年のアルバム「スーパー・トゥルーパー」からの先行シングルのこの曲は
ちょうどラジオで洋楽を聴きあさってた頃に大ヒットしてた曲で、
当時は歌詞の意味はわからなかったけど大好きな曲の一つだった。

「ザ・ウィナー」という邦題のイメージ、そして4年後のロス五輪のイメージからか
長年「スポーツの勝者を褒め称える曲」だと思い込んでいたのだけども
大人になってから歌詞の意味を知って驚愕したのを覚えています。

この曲は恋愛における勝者と敗者、すなわち一人を巡っての二人の事を指しています。
勝者は全てを得る(The Winner Takes it all)という歌詞の通り、
主人公は新しい彼女を得た元カレの事を歌っているのですね。
全然、スポーツではなかったって話ですが(笑)

曲の作者であるビヨルンとリードヴォーカルを取っているアグネッタが
この時すでに離婚していた、という事実もこの歌詞に深さを付け加えています。
本人らは自分達の事ではない、と否定しているそうですが
まったく関係がないわけがないですわね。だってにんげんだもの(笑)

アレンジ面から言うとこの曲は、たった2つのメロディーを繰り返しているだけで
歌詞とリンクしながらバックのアレンジが変わっていく楽曲。
なので、どうしてもこの歌詞情報を演奏する全員で共有したかった。
歌詞に流れる感情に沿わないとこの曲を表現出来ないような気がしたからだ。

一番最後の「The Winner Takes it all」の絶唱の直前に入る
「What You see?(わかるでしょ?)」のたった一言の重みは
すべての歌詞の物語を把握していないと意味をなさない。

海外のオーディション番組「アメリカン・アイドル」でこの曲を歌った人がいたのだが
その人はメロディーをフェイクして歌ったために落選してしまったらしい。
審査員は「この曲はメロディーに忠実に歌うべきであなたにはまだ早かったかな」と
コメントをしたそうだが、すごくこの楽曲を理解した上での発言だと思える。

リハーサルでは「長年の夢が叶ってようやくこの曲を演奏出来る」と浮き足立ってたけど
こういう曲はやっぱり難しくて、何度も頭をひねりながらアプローチを考えるはめに。

幸い、本番での演奏はお客さんにも喜んでもらえたからよかったものの
個人的にはこれからもっといい演奏が出来るような気がしている。
頭に描く理想の演奏に近づけるように、もっと精進しなきゃね。

The Winner Takes it Allの和訳はこちらのブログで。