ポール・マッカートニーが去年のリベンジとして来日、しかも大阪が初日。
生粋のビートルズヲタである自分はどうするのか、と思いきや
自らも演奏の仕事が入っていて、いわゆる裏番組での演奏という日。

どっちにしてもドーム公演は行く気がしなかったのと
過剰とも言えるビートルズナンバー中心のセットリストにあまり興味がない。
ポールのライブはやっぱり「ヴィーナス・アンド・マース~ロック・ショウ」で
幕を開けてくれないと!と思ってたので今回もハナからパスしてました(笑)

2010年のブラジル公演。
・・・・なんでこのセットリスト時に来日してくれなかったかなあ(ノД`)

とはいえ、昨年のリベンジだから日本専用のセットリストかも?という
恐怖に似た感情がありましたが、「マジカル・ミステリー・ツアー」始まりで
あんまり目新しい曲もなかったようなので一安心。

自分のライブもそれなりにお客さんが入ってとても楽しかったんですが
ステージ間の休憩中にスマホを見るとワイルド・ワンズの加瀬邦彦氏が死亡したという
ニュースが流れてきてとても驚いてしまった。しかも自殺。

古い音楽を演奏する事が多い自分にとってグループサウンズの人達の曲は
それなりにレパートリーに入っているし、ワイルド・ワンズの
「想い出の渚」はしょっちゅう演奏している。
ましてや今はグループサウンズの曲のみを演奏するバンドに参加しているから
このニュースは余計にショックでした。

今回来日したポールは72歳、そして加瀬さんは74歳。
同じ日に同じ世代のミュージシャンがまるで正反対の行動を取ってるのは
なんの因果なんだろう。

2009年に自殺してしまった加藤和彦氏の遺書にはこう書かれていたそうな。

「世の中が音楽を必要としなくなり、もう創作の意欲もなくなった。
死にたいというより、消えてしまいたい」

加瀬さんもがんの闘病生活から鬱病を患っていたそうだ。
真面目でありすぎるが故に自分を追い込んでしまったんだろうか。

「自分にはそれしかない」というのは強みなのか、それとも弱みなのか。
その差は本当に紙一重なんだろうし、健康状態にも左右されるのかも知れない。
僕自身は一線で活動している人達に比べたら恐らく不真面目なんだろう。
音楽を演奏する事は大好きだけど、それしか出来ない人間には昔からなりたくなかったからだ。
天秤の片側に音楽を乗せて、もう片方に生活や人生を乗せるような生き方よりは
生活の中に音楽を取り込んでしまうような生き方をしたかったし、今もそれを目指している。

音楽には聞く楽しみもあるし、それこそ模倣する楽しみもある。
そして人生には他にも楽しみがもっとあるんじゃないかとも思う。
それら全てを享受するには、人に与えられた時間は余りにも少なすぎる。

がんと宣告されて同じように死と向き合った際に佐久間正英氏はこう書いていた。

自分は演奏家で、ギターをベースをその他の色々な楽器を弾く。そんな人間がもしかしたらもう二度と今までのようには演奏できない身体になる可能性もある。弾けることが当たり前に生きて来た人間にとっては何とも奇妙な感覚だけれど、悲しい気持ちや悔しい気持ちは全く湧いては来ない。今まで自分の演奏に絶対の自信を持って悔いなくやって来たと思える自負からかも知れない。いや、もしかしたら、音楽よりもずっと大切な何かに初めて向き合っているからかも知れない。

死と本当に向かい合わせになった時、自分はどういう行動を取るのかはまだわからない。
自分は佐久間氏のような心境になれる様に日々を頑張って行きたいと思う。

村西とおるカントク、本当にいい言葉です。