ハナモゲラボ / 試行錯誤の実験人生

日々、PCや各種デバイス、楽器等に翻弄されながら電脳の森をさまよう男の日常と様々な実験をさらりと記しております。

夜更けに今井美樹を語ってみる

October 12 2011

僕は今井美樹というヴォーカリストが大好きである。
いや、大好き「だった」と言うべきか。

彼女のデビュー曲である「黄昏のモノローグ」を聞いた高校1年の時から
すべての曲を追ってきたいわば「おっかけ」みたいなもんなのだ。

彼女の透明感あふれる声は日本女性の中では類い希なるものだと思うし
色んな物語を歌っても、どこか無感情というか
「語り部」としての立ち位置をキープしているために
泥臭さが全くなく、作家陣の良質な曲とミックスされた時に
なんとも聞き心地の良いポップスに昇華するのである。

彼女が1988年に出したクリスマス企画アルバム「fiesta」は
1曲以外、全て洋楽のカバーという隠れた名盤なのだけど
「Feel Like Makin’ Love」とか「Superstar」などを完全に自分の物として
消化しているのは驚嘆に値する。

特に3枚目のアルバム「Bewith」から参加しはじめた作詞家、岩里祐穂と
作曲家の上田知華、柿原朱美両名とのタッグはなんとも最強の楽曲群。
(「Piece of my wish」は作詞:岩里祐穂、作曲: 上田知華 、編曲:佐藤準の制作)

1991年に発表されたアルバム「Lluvia(ジュビア)」は
この制作陣が頂点を迎えた時期の作品で
シングル曲が1曲も収録されていないにも関わらず、捨て曲なしの超お気に入り。
演奏陣も一流で、気持ちよい16ビートの「SATELLITE HOUR」から
グッとアルバムの世界感に引き込まれてしまうのだ。

しかし、1992年。
彼女の制作陣に大きな変化が起こる。
現在の夫であるギタリスト、布袋寅泰氏の参加である。
(僕個人はBOOWY世代なので布袋氏の事は大好きです。念のため。)

結婚に至るまでの経緯は皆さん、知るところであるが
ここではあえて細かく触れることはしない。

当時、布袋氏は山下久美子と夫婦関係にあったのだが
彼には「嫁、(もしくはお気に入りの女性)の仕事場に介入」という
悪いクセ(?)があるようで、山下久美子の作品も
すっかりホテイ色に染まり、挙げ句の果てにはライブツアーにも参加していた。

しかし、元々「総立ちの女王」と呼ばれた山下久美子の作品には
布袋氏のカラーは非常にマッチしたようで
「1986」「POP」「Baby Alone」のいわゆる「ホテイ三部作」は
聞いててとてもかっこよかった。

当時、「ACT RESS」と「Stop Stop Rock’nRoll」という
2枚のライブアルバムを残しているが、これは日本の「ロックライブアルバム」の中では
名盤と呼んでもいいほどのクオリティだと個人的に思う。
特に「ACT RESS」の1曲目「Why?」の古田たかし氏のドラムは鳥肌が立つほどカッコイイ!

話を今井美樹に戻す。

布袋氏は7枚目のアルバム「flow into space」から作曲家、ギタリストとして参加するのだが
ここではまだ「出入り業者」という関わり方だったようで
特に目に見えるような仕事はしていない。

しかし事情は次のアルバム「A PLACE IN THE SUN」で一変してしまう。
今までのアルバムで全てのアレンジを手がけていたに等しい佐藤準が
制作スタッフから外れ、布袋氏がプロデューサーという立場で参加しはじめるのだ。

それでもこのアルバムは全曲のアレンジが布袋氏ではなかった。
坂本龍一が2曲編曲で参加しているのが、このアルバムで目を引く所。
(その2曲「Martiniqueの海風」と「海辺にて」は、まさにサカモト満開でかっこいい)

シングル「Miss You」の布袋氏のギターソロでもものすごく違和感を感じたが
アルバムの布袋氏担当曲、「sweet love, sweet pain 」を聴いた時に
まさに僕は落胆してしまったのである。

このヴァネッサ・パラディスの「Be My Baby」の模倣としか言えない曲は

今までの今井美樹ワールドをまさにぶちこわすほどの破壊力があった。
これを山下久美子に歌わせるのならまだよかっただろう。

そして続くシングル「Ruby」で僕はもう今井美樹を聴くことはないだろうと思った。

彼女はこのシングルから「語り部」である事を放棄してしまったような気がする。
自分の情念をモロにヴォーカルに反映させ始めたのである。

私生活がどうたらとやかく言うつもりはないし、正直どうでもいいのだけど
こういう押しつけがましい世界感を彼女の歌世界に求めていたわけではないのである。
なんとも聴いてて暑苦しさがあるこの曲はいまだに苦手。
もちろん、表現者としては新たな事に挑戦するのは素晴らしい事なのだけど。

そして続く「PRIDE」は作詞作曲も布袋氏が担当。
ドヤ顔で「わたしはいま~♪」とか歌っているのを見て、
正直苦笑するしかなかったのを覚えている。

そしてその後布袋氏は、山下久美子と正式に離婚した後、今井美樹と入籍。
今ではもう「2個イチ」で語られる存在になってしまっている様子だが
肝心のアーティストとしての今井美樹はすっかり布袋ワールドに浸食されてしまった感がある。

前妻、山下久美子が「ライブにダンナのファンばっかり増えて複雑だった」と
語っていた様に、今井美樹もさすがに危機感を感じたのか
最新アルバム「corridor」は編曲を自分のバンドのキーボーディストに委ね
夫の布袋氏の楽曲を1曲も入れずに制作している。
(過去の楽曲のリメイクも含まれている)
これは6枚目のアルバム「Lluvia(ジュビア)」以来、なんと17年ぶりだったが
これから彼女がこの方向性で活動をしていくのかが注目である。

山下達郎・竹内まりや夫妻は、お互いの趣味を掘り下げるような制作をし
豊富な知識量に裏打ちされた良質ポップスを生み出している。
正直、布袋氏は彼女の「ダンナ」としてはいいのかも知れないけども
今井美樹というアーティストの良さをあまり生かし切れてない気がするんだよなあ。

私生活を歌世界に反映させるというのも、その人の表現方法には違いない。
しかし僕個人はそんな今井美樹は聴きたくないのであります。

| Posted in 音楽 | Comments (1)

One Comment

  1. m
    Posted 2011年10月17日 at 9:00 PM |

    私も、ほぼデビュー当時から聴き始めて、布袋ズッポリになってから離れた経験を持っているので、あなたの気持ちはよくわかります。しかし、最近になってオリジナルアルバムをすべて聞きなおしてみたのですが、楽曲は別として、「布袋時代」が今井のボーカリストの能力としてはピークにあった感じがするので(ご指摘の”corridor”では、年齢的な衰えが見える)かなり複雑な気持ちです。私が思うに、布袋はソングライターとしてならまずまずです。あなたがお嫌いなw、「Miss You」や「Ruby」にしても、詩は岩里祐穂なので。「Pride」以降の「布袋一辺倒」なのがよくないのです。それでも、今井のボーカリストとしての能力の高さは布袋時代を抜いては語れないと思うので、楽曲は我慢して聞いて欲しいです。それと、私は竹内まりやはソングライターとしてはあまり評価してないです。ボーカリストとしては好きですけど(今井とは別の意味で)。

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