この間、なんとなく見つけて買ったジョン・ライドン著のこの本。

ジョン・ライドン。言わずとしれたセックス・ピストルズの元ヴォーカリストである。
当時はジョニー・ロットンという名前でした。
自伝、というのが琴線に触れたのもあるのだけど、彼の発言の数々は
本当にパンク(チンピラ)か?と思うほど知性にあふれていたので
彼の言葉にたっぷり触れられるという事にとても楽しみを覚えました。

読み始めてみると、まずはあのサンフランシスコのラストライブの事から。
ギャラがたった63ドルだった事、あのライヴの夜は寝る部屋がなかった事、
そしてお金を持っていないのにアメリカに置き去りにされて
マルコム・マクラレンの秘書からお金を借りてロンドンに帰った事などなど
一気にこの本に引き込まれてしまいました。

思っていた以上に、彼はチンピラではなく「知性の人」だった事に驚き。
活動開始した時はたしかまだ19歳とかそこらだったはずだけど
この時に確固たる自己をすでに確立していたのが恐ろしいぐらい。

一般の人が抱く(ほぼシド・ヴィシャスの印象だが)
自堕落、好き勝手、ドラッグ、破滅という「パンク」と言うイメージの
全て正反対を当時から実践していたんですね。
病的なほどに自分の内なる物に向き合う姿勢がものすごく硬派。

過去エントリーで書いたシド・ヴィシャスに対する
もやもやした思いが、この本を読んですべてすっきりしました。

いつも思うのが、ロック・ミュージシャンって死んでしまった瞬間に
その言葉と共に時が止まってしまう事に、受け取る側はフラットでいるべきだと言うこと。

ジョン・レノンの今のイメージって、夫婦愛とか平和運動家とか反戦とか
そんな感じのCMなんかも見かけますけども、あれは1980年までのジョンであって
今ももし生きてたら絶対にそんな感じではない気がするんですよね。
清志郎にしてもそうですけども、死んでしまった後はまさに「死人に口なし」で
今ではあの「ラヴ・ミー・テンダー」と「サマータイム・ブルース」のおかげで
反原発運動に当時から熱心だったのように言われてますし。
絶対お前ら他のRCの曲知らねえだろ、って思っちゃいますもんね。

パンクというあの嵐のようなムーブメントの中でもがいたあげく
シド・ヴィシャスは死んでしまい、ジョン・ライドンは生き残った。
そして彼は今でも生きている。

結局はそれが全てなんじゃないかと。

死んだ人間が大昔に残した言葉よりも、現在を生きる人間の言葉の方が
僕にとってはとてもリアルなんだなあ、と気づかせてくれた本なのでした。

ジョン・ライドンにはもっと情報発信して欲しいですよね。

ジョンの最新インタビューはこちら。