古本屋で鈴木英人氏のイラスト集を見つけた。

今回はわざわざこの作品集を買う事もなかったんだけれども、
この人のイラストを見て思い出すのが、FM情報誌「FM STATION」という人は
間違いなく自分と同年代に違いない。
FM情報誌としては最後発の1981年の創刊である。

僕がFMラジオを聴き始めたのは1980年の終わり頃。
当時はまだレンタルレコード店もなく、新しい音楽を聞くには
お店に行って買うか、ラジオを聴くしか方法がなかった。
当時のFM放送は生放送の番組がまだまだ少なくて、
前もって放送プログラムが決められていたのだ。
なので、FM情報誌でオンエアされる曲をチェックしておいて
その日はラジオの前で、その曲が流れるのを心待ちにしていたものだ。
エアチェック、という言葉も今ではまったく聞くことがなくなってしまった。

たった200円で買えた「FM STATION」は子供にとっても容易く買える値段。
あと、英人氏のイラストのカセットレーベルも楽しみだった。
「FMレコパル」はちょっと敷居が高かったというのもあるけれど(笑)

そして、ふと思った。
いつから僕はラジオを聞かなくなったんだろう、と。

はっきりとしたきっかけは今でも覚えている。
それはFM802が開局した1989年。僕は18歳になっていた。
街中にオープンカーが走り回り、ステッカーを使ったキャンペーンをしていた。
興味本位で80.2にダイヤル(←これ大事)を合わせてみたけれど
全体的にガチャガチャしてて、やかましいなという印象。
この印象は今でも僕は802に対して抱いたままだ。

情報誌を買って隅から隅まで欲しい曲をチェックして
ラジオの前で録音ボタンに手をかけて待っていた自分にとって、
イントロやアウトロに喋りが入る事は絶対に許されなかったのだ。
それよりも、もっと嫌だったのは曲名を言わない番組が多かった事。

「あ、いい曲」と思ってもそのまま曲が終わってしまって
次の話題に行ってしまうような番組の構成に、僕はとても嫌悪感を抱いた。
NHK-FMなんて曲をかける前、そして終わった後にも
ちゃんと曲と演奏者をはっきり告げていた番組があったというのに。

この放送局のスタイルに脅威を抱いたのか
ラジオ番組全体の構成もどんどん変わっていってしまい、
僕はラジオのスイッチを入れることがなくなってしまった。

いまや作り手側の気持ちも半分はわかるだけに
曲名を決めるのにどれだけアーティストが悩むのか、
そして、イントロのフレーズを生み出すだけでどんなに血を吐くような思いをするのか、
そうやって出来上がってきた曲が、アーティストにとって
どんなに愛着があるのかをもっと察してほしいなと思う場面が
今のラジオを聴いてても多々ある。

ただのBGMとして流して、その曲について何も触れないDJ。
「これぐらい知ってるよね~」みたいな散漫さが見えてとても嫌な気がする。
そのくせ、局が決めた「イチオシ」を「ヘビーローテーション」なんて名前をつけて
おんなじ曲ばっか流しまくるのはどうなんだろう。

KISSの「ラヴィン・ユー・ベイビー」のエースのギターソロが始まる直前に
カットインしてベラベラ喋りだされた時には、思わず「てめええ!!」と
叫んでしまった事もあったり(笑)
たった4小節も待てねえのか!と憤慨しますよあれは。

ラジオ番組のスタイルが変わっていくにつれて
FM情報誌もどんどんスタイルを変えていったけれども
結局FM STATIONは1998年に休刊してしまいました。

そして今はもうすべてのFM情報誌は休・廃刊となっている。

そりゃね、今はもうネットで調べたら、今流れてる曲もわかるわけですよ。
だけどやっぱり僕は今のラジオ番組のスタイルには納得がいかない。

昔はよかった、なんて言うとおっさんのノスタルジーと言われるけれど
そうじゃない。今がダメなんだ。決定的に。

NHK-FMの「三昧」みたいに対象物に愛を感じる番組が
どんどん復活してくれればいいんだろうけど、もう無理かなあ。