ラジオにかじり付いて流行歌をカセットに録音する、という事をやりだしたのが小学校3年ぐらい。
ちょうど1980年あたりですね。

土曜日。半ドンで家に帰るとまずFM大阪の「コーセー歌謡ベストテン」と「ダイアトーンポップスベストテン」で邦楽・洋楽の最新ヒットを録音する。
この番組、上位3曲はきっちりフルサイズで放送してくれてたんですな。
今みたいにDJの喋りがイントロやアウトロに被ったりしないのです。
エアチェックをする側にもちゃんと配慮してくれてたんやろなあと今では思う。
そういう意味では今のラジオって音楽そのものを軽く扱ってる感がするんだわね。
テメー、そのイントロのアルペジオでベラベラ喋ってんじゃねー!的なw

そうしてカセットテープを埋めていくのが楽しみでした。
1980年といえば松田聖子さんが「裸足の季節」でデビューしてジョン・レノンが撃たれて死んだ年。
ラジオから流れる「スターティング・オーヴァー」の意味もわからなかったし、ビートルズの名前すらもまだ知りませんでした。

その1980年以降の日本のヒット曲といえば

  • 「白いパラソル」松田聖子
  • 「ハイスクール・ララバイ」イモ欽トリオ
  • 「スニーカーぶる~す」近藤真彦
  • 「探偵物語」 薬師丸ひろ子

などなど、いわゆるニューミュージック系の人達がアイドルの現場に降りてきて仕事を始めた時代と合致します。
ただ単に文字だけで追ってた子供の僕が後から気付いた存在が作詞の松本隆さん。
この曲も?え、この曲もか!!というぐらいに接して今まで来ている事に気付きました。

そんな松本隆さんの聖子ちゃんに提供した80曲の歌詞集を見つけました。

歌詞自体はそれこそネットでいくらでも拾えますが、ここに収録された5本の書き下ろし小説が読みたくて。
歌詞、というリズムとの兼ね合いが大事な物を改めて活字で追うとまた違った発見があります。

松本隆さんの詞のフレーズは1行に込められた物の隙間がとても心地よいのです。
くどくどと状況説明がない分、受け取る側のイマジネーションを広げてくれる。

薬師丸ひろ子さんの「探偵物語」の歌い出しとか

あんなに激しい潮騒が あなたの背後(うしろ)で黙りこむ

どうやったらこんな書き出し出来るんじゃい、と唸るしかありません。
この曲は作曲も盟友である大瀧詠一御大ですね。

そういえば過去アニソンバンドで演奏して、今は娘がカラオケで歌いまくってるマクロスFの「星間飛行」も歌詞が松本隆さん。

https://www.youtube.com/watch?v=2fEgOCdIOq0

その歌詞を作る際のインタビューが過去、公式サイトに掲載されてたとか。
以下、このサイトから引用

水面が揺らぐ
風の輪が拡がる
触れ合った指先の
青い電流

出だしは、水面の静かなイメージから始まるんだ。
「す」は50音の中でも最も弱い音のひとつだし、「水面」「ゆらぐ」っていうのもすごく微細なイメージだよね。
水面に水が一滴落ちて広く拡散していく。
次に出て来る「風の輪」っていうのは、自然界には普通、存在しないよね。
つまりその裏には“爆発”が潜んでいるんだ。

ここからだんだん強いイメージがフェードインしてくる。
「風の輪“が”ひろ“が”る」で韻を踏んでいくと、綺麗に輪が広がっていくイメージになる。
あと密かにさ、「水面」は『マクロス ゼロ』(2002年)で、「風」は『マクロスプラス』(1994年)へのオマージュなんだ。
『マクロス ゼロ』は南の島と海が舞台の物語だし、『マクロスプラス』はオープニングで風車がでてくるでしょ?

それで、次の「触れ合った指先」っていうのは、システィーナ礼拝堂にあるミケランジェロの「天地創造」の天井画のイメージ。
あの指と指は、神と人だよね。
そして、「青い電流」っていうのは静電気なんだけど、自分と違う価値観と出会ったときに感じる痛みなんだ。

さすがはプロ、というか重みがありすぎて逆に怖いです(笑)
産み落とされる物の背景にこういうストーリーがあるからこそ心に残るんでしょうね。

そんな松本隆さん、来月には恵比寿・ザ・ガーデンホールで『風街ガーデンであひませう 2017』というイベントが開催されるとか。

https://spice.eplus.jp/articles/135832

ちょいとこの日程は色々予定があって行けないので残念ですが、その分この本を読んで浸りたいと思います。

聖子ちゃんの曲はシングルはもちろん名曲ぞろいですが、個人的に一番好きな曲は1983年のアルバム「ユートピア」に収録されている「マイアミ午前5時」。
このアルバムもほぼ全曲、松本隆さんが歌詞を書いてるんですよねえ。
もはや松本隆さんの歌詞でここまで大きくなりました、と言っても過言ではありませぬ。